クレヨンの質感を楽しむ
8年前に久しぶりに絵を再開したとき、最初に手に取ったのがクレヨンでした。子どもの頃から絵を描くのは好きでしたが、生活が忙しくなるにつれて自然と筆を置くようになり、絵を描かなくなっていました。昔は油絵も描いていましたが、再び始めるとなると、油絵はどこか構えてしまい、ハードルが高い気がしていたんです。気合いも道具もたくさん必要で、「さあ、描くぞ」という心の準備までいるような気がして。そんなとき、ふと画材屋さんで手に取ったのがサクラクレパスでした。
クレヨンというと、小さな子どもが最初に使う画材、というイメージが強いかもしれません。ですが、大人になってから手にしてみると、その楽しさに新鮮な驚きがありました。クレヨンには、他の画材とは違う、親しみやすい柔らかさがある。描きながら手で触れ、色を重ねていくあの感覚が、どこか懐かしくもあり、とても心地よかったのです。クレヨンを塗るときの、紙との摩擦や指先に伝わるわずかな抵抗、少しずつ色が重なって深みが出ていく感触。それが、絵の具やペンとは違った「触れている」という実感をくれるのです。
その頃に描いた絵が、今このブログで使っているマグカップのアイコンです。特別な道具や技術があるわけではなく、ただ「描きたい」と思う気持ちのままに、クレヨンで色を重ねました。なんの気負いもなく、ただ楽しみながら描けたあの時の感覚が、このアイコンには込められているような気がします。
そしてクレヨンは、ただ素朴なだけの画材ではないことにも気づきました。塗り重ね方や強弱によっては、驚くほど力強く、まるで油絵のような深い表現もできてしまう。クレヨンは表面が滑らかで扱いやすい半面、少しずつ色が重なることで味わい深い風合いも生まれる。子ども向けの道具と思っていたものが、こうして手に馴染む画材として自分の作品の一部になるとは思いもしませんでした。
今朝、ふと「また描きたい」という気持ちが湧き上がってきました。今日の朝、ふと手に取りたくなったのも、やはりクレヨン。そして、今日はさらに「質感を描きたい」と強く感じました。紙の上に少しずつ色を乗せ、手でその感触を感じ取りながら、自分の中のイメージをじっくりと紙に定着させていく。色を重ねるたびに、紙の表面が少しずつ変わっていくあの触覚の心地よさを、もっと表現したいと思ったのです。
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