「恋するピアニスト フジコ・ヘミング」鑑賞
「恋するピアニスト フジコ・ヘミング」を映画館で見てきました。
実は、フジコ・ヘミングさんのコンサートに行ったのは、2023年5月1日に東京国際フォーラムで開催されたものが最初で最後。コンサートホールで彼女の生演奏を聴いたあの日は、今でも記憶に鮮明です。彼女がピアノに触れると、会場の空気が一変し、優しくも力強い音色が、聴く人の心に染み渡っていくようでした。今思うと、最初で最後になってしまったのが何とも言えない気持ちになりますが、あの瞬間を生で体験できたことには心から感謝しています。
さて、実は映画を見るまでにハプニングがありました……(笑)
ふと「フジコさんの映画が観たい」と思い立ち、ネットで予約を済ませて当日ウキウキしながら映画館へ向かったのですが、発券機の前でチケットが出てこない。少し焦っていると、スタッフの方が助けに来てくださり、しばらく画面を見つめた後、こう言われたんです。
「予約日、今日ではありませんね」
……なぬ! 目の前にはスクリーンがあるというのに、観られないなんて! 予約日を間違えるなんて、まさかの凡ミスでした。どうして別の日を予約してしまったんでしょう。気持ちがふわついていたせいか、日程をちゃんと確認していなかった自分に思わず苦笑い。ポップコーンの香りが漂う中、ぼーっとしたまま映画館を後にし、別の日にリベンジすることを決意しました。
そして、やってきた今日。今度こそ日にちをしっかり確認し、いざリベンジ。今回は無事にチケットも発券でき、ホッとしながら席に着きました。映画館はミニシアター系で、こじんまりとした空間が心地よく、久しぶりに訪れる小さな映画館の独特な雰囲気に懐かしさを覚えました。平日にもかかわらず、館内は満席。小さなスクリーンに映し出されるフジコ・ヘミングさんの姿と演奏に、観客全員が引き込まれていくのを感じました。
映画の中ではコンサートのシーンがふんだんに盛り込まれ、フジコさんの演奏をたっぷりと堪能できました。彼女のピアノから紡ぎ出される音は、ただ「上手い」「正確」という言葉では語れない、特別なもの。そこにはどこか包み込むような優しさがあり、時に儚く、時に力強く、まるで彼女の人生そのものが音に宿っているように感じました。彼女の演奏スタイルは賛否が分かれることもありますが、正確さが人を感動させるとは限らないんだと、改めて実感しました。
インタビューの中で、彼女が「最近は流行ではないけれど、私はロマンティックに弾きたいの」と語っていたのが印象的でした。世の中の流行や評価に合わせるのではなく、あくまで自分の信じる音楽を追求する姿勢。それは一種の覚悟ともいえるし、揺るぎない美学のようでもあります。世の中に合わせて生きるのか、それとも自分の道を突き進むのか。そのどちらが表現者として幸せなのか……それは本人にしかわからないことかもしれませんが、彼女はきっと「自分の道」を歩くことを選び続けてきたのでしょう。
そもそも、世間の価値観や流行は常に移ろいやすいものですしね(笑)。それに左右されることなく、自分のスタイルを貫く彼女の姿には、見ている私たちも勇気をもらえる気がしました。
フジコ・ヘミングさんの音楽と人生を通じて、自分にとって「表現する」とはどういうことなのかを、改めて考えさせられた映画体験でした。
フジコさんと飼っている犬、猫の写真があったのでそちらを描きました。
画材:クレヨン
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