【メルマガ】発酵中の絵本「見せないという選択」

それぞれの中にある熟成されたもの、時間

絵本の制作を進めています。

このメルマガでも、進捗を少しずつシェアしていく…はずでした。

でも、描きながら気づいたんです。

この絵は、まだ他の人の目に触れてはいけないみたいだなって。

たとえるなら、静かな湖の底で、まだ形になりきっていない泡みたいな存在。

そっとしておかないと、壊れてしまうような、繊細な時間の中にいます。

絵本というのは、構成そのものが意味を持つ表現です。

ページごとに切り取って見せてしまうと、

全体の流れが崩れたり、誤解されたり、あるいは…静かに発酵しているものが止まってしまう気がする。

最近は制作過程をオープンにする流れもあります。

でも私はどうやら、熟成タイプの作り手のようで、

途中で光を当ててしまうと、その発酵が進まなくなるような気がしました。

見せないことは、閉じることではありません。

今は、作品と静かに向き合う時間を育てています。

その時間こそが、作品の形を整えてくれると信じて。

完成したときには、

自分の手から手放せるようになると思います。

その日が来るまで、少しだけ静かに見守っていただけたら嬉しいです。

(^^)/ 熟成タイプの心の中で起きてること:

世の中には、「早く作って、すぐ出す」ことが得意な人もいれば、

「ゆっくり内側で温めて、ある日そっと出す」人もいます。

私は後者を“熟成タイプ”と呼んでいます。(勝手に呼んでみた)

熟成タイプの人は、思考や感情をすぐには言葉にしません。

頭ではなく、体と心で“感じ”て、それを深いところでじっくり熟成させる。

すぐに取り出せる言葉はないけれど、時間をかけることで、

その人だけの視点や表現に育っていきます。

だから、外から見ると「遅い」「わかりにくい」と言われがち。

でもそれは、決して鈍いのではなく、**「大事にしてるからこそ時間がかかってる」**んです。

急いで言葉にしないかわりに、

じっくりと、内側で何度も味わい、確かめながら進んでいく。

見えないところで、静かに感情を育てている人。

そんな“発酵型”の表現もある、ということが伝わったらうれしいです。



鉛筆4B  「音になる前」